保育士試験の実技は、造形・言語・音楽の3分野から2分野を選んで受験します。各50点満点で、選んだ2分野の両方が30点以上で合格。片方が満点でも、もう片方が29点なら不合格です。この判定方法のため、実技で問われるのは「得意を伸ばす力」ではなく「2つとも安定して30点を超える組み合わせを選ぶ判断」になります。
筆記に合格した人の多くが実技も通過しますが、落ちる人はいます。その大半は実力不足ではなく、条件を守らなかったか分野選びを間違えたケースです。まず選び方から決めましょう。
3分野の比較表
| 造形 | 言語 | 音楽 | |
|---|---|---|---|
| やること | 45分で条件に沿った保育の場面を色鉛筆で描く | 3分でお話を子どもに聞かせる(絵本・道具なし) | 課題曲2曲の弾き歌い |
| お題 | 当日発表(事前公表なし) | 公表された課題から当日指定 | 課題曲は事前に公表される |
| 準備コスト | 中:構図の型づくりと時間配分の練習 | 低〜中:台本作成と反復練習。道具が要らない | 高:楽器が必要。指が動くまでに時間がかかる |
| 当日の緊張度 | 低め:試験官と対面しない。手を動かし続ける | 高め:試験官の前で1人で3分話す | 高め:演奏中のミスが即座に表面化する |
| 失敗の主因 | 時間切れ・未着彩・条件の読み落とし | 3分から大きく外れる・声が届かない | 止まる・弾き直す・歌が小さい |
| 向いている人 | 絵に苦手意識がなく、締切に強い人 | 人前で話すことに抵抗が少ない人 | ピアノ経験があり、練習環境がある人 |
どの2分野を選ぶか:判断の順序
多くの受験者が「得意そうな2つ」で決めますが、選ぶ順序を変えると迷いが減ります。まず音楽を受けるかどうかを最初に判定し、受けないなら自動的に造形+言語になります。
- ピアノ(またはギター・アコーディオン)を、楽譜を見ながら止まらずに弾けるか。今この瞬間の実力で判定します。弾けない、または練習できる楽器が手元にないなら音楽は外す。この判断は早いほどいい。
- 人前で1人で3分間話せるか。抵抗が強くても練習で埋まる範囲ですが、極端に苦手なら言語を外し、造形+音楽になります。
- 45分間、手を止めずに描き続けられるか。絵の巧拙より持久力と時間管理の問題です。ここが不安なら造形を外します。
- 残った2つが答えです。3つとも問題なさそうなら、造形+言語を選ぶ人が最も多く、道具も練習場所も要らないため独学向きです。
組み合わせ別の考え方
造形+言語:楽器なしで完結。準備コストが最も低く、筆記後の2か月で間に合わせやすい。ただし当日のお題対応力が両方で問われる。
音楽+言語:ピアノ経験者の定番。描画が不要で、練習が「声を出す」方向に統一されるため相乗効果がある。
造形+音楽:人前で話す場面が音楽だけになる。話すのが極端に苦手な人の選択肢。ただし準備コストは最も高い。
選択は申請時に確定する
分野の変更は申請後にはできません。受験申請の時点で2分野を選ぶため、筆記の勉強中に一度決めておく必要があります。「筆記が終わってから考える」と、選択の余地がない状態で決めることになります。申請時期は保育士試験の日程ページで確認してください。
造形に関する技術(6記事)
造形は45分・19cm四方の枠内・色鉛筆という条件が固定で、お題だけが当日示されます。条件が固定されている=準備できるということで、構図と時間配分を型にしておくと当日の判断がほとんど要らなくなります。
| 記事 | 解決すること |
|---|---|
| 造形|試験の全体像と採点の考え方 | 何が評価され、何が減点されるのか |
| 造形|45分の時間配分|下描きと着彩 | 時間切れで未着彩になるのを防ぐ |
| 造形|使い回せる構図パターン集 | お題を見てから構図で悩まない |
| 造形|子どもと保育士の描き分け方 | 年齢差・体格差が伝わる人物を描く |
| 造形|色鉛筆の選び方と塗りのコツ | 道具選びと、速く塗るための手順 |
| 造形|落ちる絵の共通点8つ | 自分の練習作を自己採点する観点 |
言語に関する技術(6記事)
言語は3分きっかりで、絵本や道具は使えません。子ども15人程度が目の前にいる想定で話します。課題は複数公表されたなかから当日指定される形式のため、公表されたお話はすべて仕上げておく必要があります。
| 記事 | 解決すること |
|---|---|
| 言語|試験の全体像と採点の考え方 | 条件・採点観点・落ちる人の型 |
| 言語|3つのお題の違いと当日指定への備え | お題ごとの難易度と同時に仕上げる手順 |
| 言語|3分の台本の作り方|文字数と構成の型 | 話す分量の設計 |
| 言語|3分ぴったりに収める練習法 | 早口・時間余りの修正 |
| 言語|表情・身振り・目線の作り方 | 点になる非言語の使い方 |
| 言語|当日の流れと、緊張への備え | 入室から退室までの手順 |
音楽に関する技術(3記事)
音楽は課題曲2曲の弾き歌いです。伴奏の難易度は自分で決められるため、難しく弾く必要はありません。止まらないこと、歌が届くことが優先されます。
| 記事 | 解決すること |
|---|---|
| 音楽|試験の全体像と採点の考え方 | 課題曲の条件・使える楽器・採点観点 |
| 音楽|伴奏はどこまで簡単にしていいか | 自分の実力に合う伴奏の決め方 |
| 音楽|歌が評価を決める|声・表情・前奏 | 演奏より歌で点を取る作り方 |
課題曲・課題のお話・持ち物・実施要領は年度ごとに公表されます。練習を始める前に、必ず全国保育士養成協議会「保育士試験」公式ページの受験申請の手引きで当年度の条件を確認してください。
実技で落ちる人に共通すること
実技は筆記と違って、知識の量では差がつきません。落ちる理由はほぼ条件違反と未完成の2つに集約されます。造形なら指定された人数・場所・動作のどれかが抜けている、時間内に着彩が終わっていない。言語なら3分から大きく外れる、道具を使ってしまう。音楽なら途中で止まって最初から弾き直す。いずれも実力ではなく手順の問題で、練習の設計で防げます。
| 分野 | 最も多い失点 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 造形 | 時間切れで着彩が途中/条件の読み落とし | 45分の配分を固定し、条件を読んだら先に指差し確認する |
| 言語 | 3分に収まらない/声が届かない | 台本を文字数で設計し、時間を計った通し練習を回数でこなす |
| 音楽 | 止まる・弾き直す/歌が小さい | 伴奏を弾ける難度まで落とし、歌を優先する |
練習で見るべきは完成度ではなく再現性です。10回やって10回とも条件を満たせるか。1回だけうまくいった出来を基準にすると、本番の緊張で下振れしたときに30点を割ります。
実技の練習をいつ始めるか
筆記から実技までは約2か月あります。造形と言語は筆記の自己採点後からで間に合います。音楽だけは例外で、鍵盤の経験がない場合は筆記の1〜2か月前から触っておかないと、2か月では仕上がりません。筆記全体の進め方は独学ロードマップを参照してください。
よくある質問
実技は3分野のうち何分野を選ぶのですか?
造形・言語・音楽の3分野から2分野を選択します。各50点満点で、選んだ2分野がどちらも30点以上で合格です。片方だけ高得点でも、もう一方が30点未満なら不合格になります。選択は受験申請時に行い、あとから変更できないため、筆記の学習中に決めておく必要があります。
ピアノが弾けない場合、どの2分野を選べばいいですか?
造形と言語の組み合わせが現実的です。この2つは楽器も練習場所も不要で、色鉛筆と台本だけで準備できます。音楽はギターやアコーディオンでも受験できますが、いずれも一定の演奏技術が必要なため、経験がないなら無理に選ばず、造形と言語に時間を集中させるほうが安全です。
絵が苦手でも造形を選んで大丈夫ですか?
画力そのものより、条件を満たすことと45分で完成させることが評価に直結します。人物の年齢差が伝わる、指定された場面と人数が描かれている、全体が着彩されている、という条件を満たせば得点になります。上手い絵より、時間内に条件をすべて満たした絵のほうが安定します。