造形に関する技術で公式が挙げている「求められる力」には色使いという言葉が入っています。そして条件には、枠内全体を色鉛筆で着色する趣旨の指定が付くのが通例です。つまり着彩は加点要素ではなく前提条件に近い。45分のうち20分前後を占める作業でもあります。この記事では、用具の条件の確認方法から、色数の決め方、パーツ別の塗り方、塗り残しの防ぎ方、そして時間短縮のための塗り方までをまとめます。
まず用具の条件を手引きで確認する
用具の可否は年度で見直される可能性があります。以下は全国保育士養成協議会が公表している令和8年の実技試験概要の内容ですが、受験する回の受験申請の手引きと実技試験概要を必ず自分で確認してください。当日に持ち込めない用具で練習していたという事故は、避けられるのに起きます。
| 区分 | 令和8年の実技試験概要での扱い |
|---|---|
| 鉛筆・シャープペンシル | HB〜2Bのものが使用可 |
| 色鉛筆 | 12〜24色程度 |
| 消しゴム | 使用可 |
| 腕時計 | アラーム音が鳴らず、通信機能のないものは持参可 |
| クレヨン・パス・マーカーペン | 不可 |
| 摩擦熱で消える色鉛筆 | 不可 |
| 人物イラスト入りの用具 | 机上に置けない |
引っかけポイント
見落としやすいのは色鉛筆のケースです。缶やパッケージにキャラクターが印刷されていると、人物イラスト入りの用具として机上に置けない可能性があります。無地の缶やペンケースに移し替えておくのが安全です。また、水彩色鉛筆を水なしで使う場合の扱いも手引きで確認しておいてください。
色数は「12〜24色程度」。増やすほど有利ではない
色数が多いほど良い絵が描けそうに思えますが、45分の試験では逆に働くことがあります。48色や72色を並べると、目的の色を探す時間が増えます。1回の探索が3秒でも、着彩中に50回探せば2分半。ここは効いてきます。
実用上、造形で本当に使う色は多くありません。次の色があれば1枚描き切れます。
| 用途 | 使う色 | 備考 |
|---|---|---|
| 肌 | うすだいだい(ペールオレンジ) | 最も減る色。予備を1本持っておくと安心 |
| 髪 | 茶、こげ茶、黒 | 真っ黒より茶系のほうが柔らかく見える |
| 服 | 赤、青、黄、緑、桃、水色 | 人物ごとに色を変えて見分けやすくする |
| 床・木部 | 茶、うすだいだい、黄土色 | 薄く広く塗る |
| 壁 | クリーム、うすい黄、水色 | 白に近い薄塗りで済ませる |
| 空 | 水色 | 上を濃く、下を薄くするだけで空になる |
| 草・木 | 黄緑、緑 | 2色使い分けると立体感が出る |
| 影・輪郭 | こげ茶、灰 | 黒より濁らない |
本番前に、この用途ごとの位置をケースの中で固定してください。「肌はいちばん左端」と決めておけば、探さずに手が伸びます。45分の時間配分で最も削りやすいのが、この探す時間です。
塗る順番を固定する
着彩の順番は毎回同じにします。理由は2つ。判断の時間をなくすためと、時間切れになったときに主役が残らないようにするためです。
- 肌(全員分をまとめて)
- 髪(全員分をまとめて)
- 服(人物ごとに色を変える)
- 活動の小道具(絵本、ボール、クレヨンなど条件に関わる物)
- 床・地面(広い面)
- 壁・空(広い面)
- 草木・遊具などの背景要素
- 影を軽く(人物の足元、物の下)
- 輪郭をこげ茶でなぞる(人物優先)
同じ色をまとめて塗るのがポイントです。人物1人を完成させてから次に移るより、全員の肌を続けて塗るほうが、持ち替えが減って速い。色鉛筆を1本持ったら、その色で塗れる場所をすべて塗ってから置く。これを徹底するだけで数分変わります。
パーツ別の塗り方
肌
うすだいだいを、輪郭の内側にそって一定方向に動かします。強く塗る必要はありません。むしろ薄く均一のほうが子どもらしく見えます。ほおに薄く赤を重ねると血色が出ますが、これは時間が余ったときの加点作業と考えてください。顔の中の目や口は、肌を塗った後に描き足すと線が沈みません。
髪
茶かこげ茶で、髪の流れる方向に沿って線を引くように塗る。ぐるぐると円を描いて塗ると質感が出ません。輪郭の外周を先に少し濃く、内側を薄く塗ると、それだけで立体に見えます。前髪と後ろ髪の境目に1本すき間を入れると、髪型が伝わりやすくなります。
服
1人1色を基本に、人物ごとに色を変えます。同系色が隣り合うと人物の境目が消えるので、隣り合う子どもには反対系の色を割り振ってください。しわを描く必要はありません。脇の下と裾に、同じ色を少し重ねて濃くするだけで陰影になります。保育士のエプロンは1色で塗り、服との境に線を1本入れます。
床・地面
ここが最も面積が広く、時間を食います。色鉛筆を寝かせて芯の側面を使い、横方向に一定の長いストロークで動かす。先端で細かく塗ると倍以上の時間がかかります。室内の床は茶や黄土色を薄く。園庭の地面は黄土色に薄い茶を重ねる。奥を濃く、手前を薄くすると奥行きが出ます。
壁・空
壁はクリームや薄い黄で、ごく薄く。濃く塗ると人物が沈みます。空は水色を、上を濃く下を薄くするグラデーションで。雲は塗り残しではなく、周囲の水色を少し濃くすることで白く見せるのがコツです。白く残った部分がある場合は、それが「雲」として意図的に見えるかを確認してください。
草・木
黄緑を全体に敷いてから、緑を上下や片側に重ねます。1色だけだと平板になります。葉を1枚ずつ描く必要はなく、かたまりとして塗ってから輪郭の一部にギザギザを入れるだけで木に見えます。
ここが出る
時間短縮の核は「2周塗り」です。1周目は全体を薄く速く塗って白を消す。2周目で人物と主要部分だけ濃くする。1か所ずつ完成させていく塗り方だと、時間切れの瞬間に未着彩の面が残ります。2周塗りなら、どの時点で止まっても「全体が塗られた絵」になります。
塗り残しを防ぐ
白く残りやすいのは決まった場所です。次のリストを頭に入れて、仕上げの段階で順に確認してください。
- 人物どうしのすき間、腕と胴の間の細い部分
- 枠の四隅(特に上の2つ)
- 物と物が接している境目の細い線状のすき間
- 髪と顔の境、首と襟の間
- 遊具の脚のあいだ、机の下
確認のコツは、絵を少し離して見ることと、紙を回して四隅を上に向けて見ることです。近くで見ていると細いすき間に気づきません。仕上げの3分で、紙を90度ずつ回して4方向から眺めると、白い点が浮き上がって見えます。
着彩の練習メニュー
| 練習 | 内容 | 目標タイム |
|---|---|---|
| 面塗り | 5cm四方の正方形をムラなく塗る | 40秒 |
| グラデーション | 5cm四方を上から下へ濃→薄 | 60秒 |
| 人物1体 | 身長9cmの子ども1体を肌・髪・服まで | 2分30秒 |
| 広い面 | 19cm×6cmの帯を床の色で塗る | 2分 |
| 通し | 下描き済みの1枚を全部塗る | 20分 |
面塗りとグラデーションは、テレビを見ながらでもできます。この2つの精度が上がると、通しの着彩時間が目に見えて縮みます。人物の形そのものが不安なら人物の基本を、全体の段取りは試験の全体像を先に確認してください。
りわさんメモ
(ここに、りわさん自身が使った色鉛筆と、塗りで苦労した点を1〜3文で書き足してください。例:24色のものを無地のケースに入れ替えて持ち込んだ。肌色が途中で短くなって焦ったので、同じ色を2本入れておけばよかった。)
よくある質問
色鉛筆は何色のセットを買えばいいですか。
令和8年の実技試験概要では12〜24色程度と案内されています。24色前後のセットが扱いやすく、探す時間も抑えられます。用具の条件は年度で見直される可能性があるため、受験する回の受験申請の手引きで必ず確認してください。
水彩色鉛筆やこすると消える色鉛筆は使えますか。
摩擦熱で消える色鉛筆は使用不可とされています。水彩色鉛筆については扱いを含めて受験申請の手引きで確認が必要です。判断に迷う用具は持ち込まず、通常の油性色鉛筆で練習しておくのが安全です。
塗り残しが少しあると不利になりますか。
採点基準は公表されていないため、点数への影響は断定できません。ただし条件で枠内全体の着色が求められる以上、白い面が広く残っている絵は条件を満たしていない状態に見えます。仕上げの数分を確認に充てて、意図しない白を消してください。
