造形に関する技術で公式に示されている「求められる力」は、保育の状況をイメージした造形表現(情景・人物の描写や色使いなど)ができること、です。ここに人物の描写が明記されています。つまり人物は避けて通れない。しかも条件では子どもと保育士の人数が指定されるので、見た人が子どもと保育士を区別できることが実質的な必須事項になります。この記事では、絵の経験がない人でも手順どおりに描けるように、人物の描き分けを言葉で分解します。
描き分けは「頭身」でつく
子どもと大人を描き分ける最も確実な方法は、顔の造作ではなく頭身です。頭身とは、身長が頭何個分かという比率のこと。これを変えるだけで、同じ顔を描いても年齢が変わって見えます。
| 人物 | 頭身の目安 | 体つきの特徴 | 19cm枠での身長の目安 |
|---|---|---|---|
| 0〜1歳児 | 3頭身 | 頭が大きく手足が短い。胴が丸い | 4〜5cm |
| 2〜3歳児 | 3.5〜4頭身 | 頭が大きい。おなかが前に出ている | 6〜7cm |
| 4〜5歳児 | 4〜4.5頭身 | 手足が伸びてくる。首が見える | 7〜9cm |
| 保育士(大人) | 6〜6.5頭身 | 肩幅がある。首と腰の位置がはっきりする | 12〜14cm |
実際の人体は大人で7〜8頭身ですが、19cm四方の枠に描く絵では6頭身くらいに抑えたほうがバランスよく見えます。重要なのは絶対値ではなく差です。保育士の身長が子どもの1.5〜1.8倍になっていれば、それだけで大人に見えます。
ここが出る
頭身に加えて、保育士だとわかる記号を1つ足すと確実になります。エプロン(首から下に四角い面と肩ひも)、髪をまとめている、長ズボンまたはジャージ。このうち1つでいい。エプロンは形が単純なので描きやすく、色を1色塗るだけで大人だと伝わります。
人物を1体描く手順(言葉で追える形)
本番で迷わないよう、描く順番を固定します。以下は正面向きに立っている4歳児を描く場合の手順です。この順番を体に入れておけば、ポーズが変わっても応用が利きます。
- 頭の丸を描く。やや縦長の卵形。ここが基準になるので大きさを決めてから進む。
- 足元の線を決める。頭の丸の下に、頭4個分の位置を目測して床の高さを点で打つ。
- 背骨の線を1本引く。頭の下から足元の点まで、まっすぐ薄い線。これが体の軸。
- 肩の線を横に引く。頭の下、頭1個分の3分の1くらいの位置。肩幅は頭の横幅の1.2倍程度。
- 腰の線を横に引く。肩から頭1個分半ほど下。子どもは胴が長いので、腰は低めでいい。
- 腕と脚を棒で描く。肩から手先、腰から足先へ、それぞれ2本の棒。関節は肘と膝の1か所ずつ。
- 棒に肉をつける。棒を芯にして、その周りを筒で囲むように輪郭を引く。子どもの手足は太めに。
- 服の線を入れる。首元、袖口、ズボンやスカートの裾。線を3〜4本足すだけで服になる。
- 顔を入れる。目・口・(必要なら鼻の点)。髪の輪郭を頭の丸の外側にかぶせる。
- 手と足の形を足す。手はミトンのような丸、足は靴の形。ここは省略しない。
1〜6が下描きのアタリ、7〜10が輪郭です。慣れると1体3〜4分で描けます。45分の時間配分では下描きに12分を割り当てているので、人物4体なら1体3分が目標になります。
頻出ポーズの描き方
保育の場面で出てくるポーズは種類が限られます。次の5つを手順化しておけば、たいていのお題に対応できます。いずれも「背骨の線をどう曲げるか」で説明できます。
1. しゃがむ(保育士が子どもに目線を合わせる)
造形で最も使うポーズです。背骨の線を短くする(立位の3分の2程度)。腰の位置を膝と同じ高さまで下げる。膝から下は前に折り返して、足首が腰の真下より前に来るようにする。太ももはほぼ水平、すねは垂直。これで自然にしゃがんで見えます。保育士がしゃがんで子どもと同じ目線になっている絵は、それだけで保育の場面らしさが出ます。
2. 手をつなぐ
2人を横に並べ、内側の腕を斜め下に伸ばす。つないだ手は2人の中間、腰より少し下の高さで重ねる。身長差がある場合(保育士と子ども)は、大人側の腕を下げ、子ども側の腕を上げて、手の位置を子どもの肩あたりに持ってくる。手そのものは、2つの丸が重なった形で十分伝わります。
3. 座る(床座り・いす座り)
床に体育座りをするなら、背骨を垂直のまま短くし(立位の半分)、膝を立てて腕で抱える。あぐらなら、腰から下を三角形の面として描き、その中に足の先を2つ入れる。いす座りは、腰の位置をいすの座面の高さに合わせ、太ももを水平、すねを垂直にする。座りポーズは「腰の高さ」を先に決めると崩れません。
4. 抱き上げる・寄り添う
保育士が子どもを抱く場合、子どもの体は保育士の胸から腰の高さに来ます。保育士の腕は子どもの背中とお尻を支える形で、2本の腕が子どもを囲む。難しければ、抱き上げずに保育士がしゃがんで子どもの背中に手を添えるポーズに変えても、関わりは十分伝わります。
5. 走る・歩く
背骨の線を少し前に傾ける。腕と脚を左右で前後に振り分ける(右腕が前なら右脚は後ろ)。前後の脚の間を開けて、後ろ足のかかとを浮かせる。この2点だけで動きが出ます。歩く場合は傾きを浅く、開きを小さく。
顔と表情
19cm四方の枠だと、顔は直径1〜2cm程度になります。この大きさに目鼻立ちを細かく描き込む余裕はありませんし、描き込むほど崩れます。次の3点で十分です。
| 表情 | 目 | 口 | 眉 |
|---|---|---|---|
| 笑顔(基本) | 上向きの弧、または点 | 上向きの弧(開いた口なら塗りつぶさず輪郭だけ) | ゆるい八の字(省略可) |
| 集中している | やや小さい点 | 短い横線 | 目に近い位置に水平線 |
| 驚き・発見 | 丸 | 小さい丸 | 目から離して上に |
基本は笑顔でかまいません。ただし全員が同じ笑顔だと単調なので、1〜2人だけ「集中している」表情にすると場面が生きます。顔の向きも全員正面にせず、横顔(輪郭の片側を少しへこませ、目と口を片側に寄せる)を混ぜてください。顔の向きは視線の方向を示すので、活動を伝える力があります。
引っかけポイント
時間に追われると、手足の先を省略しがちです。腕が肘から先で消えている、脚が膝から下で切れている、手が棒のまま。これは「未完成」に見える典型です。手と足は形が単純でいいので、必ず描き切ってください。手はミトン型の丸、足は横から見た靴の台形。この2つを描くだけで、人物が完成して見えます。
練習は「1体5分×回数」で積む
人物の練習に45分の通しは要りません。A4のコピー用紙を4分割し、1マスに1体、5分で描く。1日4体、1週間で28体。これだけで手が変わります。描く対象は、上の5ポーズを順番に回してください。
| 日 | 描くもの | チェックすること |
|---|---|---|
| 1日目 | 立っている子ども4体(4歳児) | 4頭身になっているか。手足の先を描いたか |
| 2日目 | 立っている保育士4体 | 子どもの1.5倍以上の身長か。エプロンを描いたか |
| 3日目 | しゃがむ保育士+子ども を2組 | 目線の高さが合っているか |
| 4日目 | 手をつなぐ2人組を2組 | つないだ手の位置が自然か |
| 5日目 | 座る子ども4体(床座り・いす座り) | 腰の高さを先に決めたか |
| 6日目 | 走る・歩く子ども4体 | 前後の脚が開いているか |
| 7日目 | 3人の子ども+保育士1人を1枚に | 大きさに差がついているか。重なりが1か所あるか |
7日目まで進んだら、そのまま構図の型の練習に接続できます。人物が描けるようになると、構図の練習が一気に楽になります。
りわさんメモ
(ここに、りわさん自身が人物を描けるようになった過程を1〜3文で書き足してください。例:最初は保育士と子どもの区別がつかない絵だった。エプロンを描くと決めてから一発で伝わるようになった。)
よくある質問
子どもと保育士の区別は何でつければいいですか。
まず身長差です。保育士を子どもの1.5〜1.8倍にすれば、それだけで大人に見えます。加えてエプロン、まとめた髪、長ズボンのいずれか1つを描くと確実になります。顔の描き分けで区別しようとすると小さい絵では伝わりません。
顔はどこまで描き込むべきですか。
19cm四方の枠では顔は直径1〜2cm程度になります。目・口・髪の輪郭で十分で、それ以上描き込むと崩れやすくなります。表情は笑顔を基本にしつつ、1〜2人だけ集中した表情にすると場面が伝わりやすくなります。
手や足がうまく描けません。省略してもいいですか。
省略はおすすめしません。手足の先がない人物は未完成に見えます。手はミトンのような丸、足は横から見た台形で構いません。形の正確さより、描き切られていることのほうが大事です。
