特別支援教育・インクルーシブ教育は、教育原理でも社会的養護でも、そして子ども家庭福祉でも顔を出す横断分野です。年号と用語の定義がはっきりしているので、覚えれば確実に得点できるタイプの範囲でもあります。
この記事では、2007年の転換から現在の合理的配慮までを、年表と定義の表で整理します。「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」の違いのような、毎回どこかで問われる区別も明示します。
ここが出る
幼稚園教育要領も保育所保育指針も、障害のある幼児への指導について記述を置いています。令和8年前期の教育原理は、問2で幼稚園教育要領の「特別な配慮を必要とする幼児への指導」から、海外から帰国した幼児や日本語の習得に困難のある幼児への配慮に関する穴埋めが出ました(同じ項には障害のある幼児などへの指導も置かれています)。制度史だけでなく、要領・指針側の記述も出るということです。(出典: 全国保育士養成協議会「過去の試験問題」)
2007年、「特殊教育」から「特別支援教育」へ
平成18年(2006年)に学校教育法等が改正され、平成19年(2007年)4月から特別支援教育が本格実施されました。これが分岐点です。何が変わったのかを4点で押さえてください。
| 論点 | 特殊教育(〜2007年3月) | 特別支援教育(2007年4月〜) |
|---|---|---|
| 対象 | 障害の種類・程度に応じて定められた場に就学する子ども | 発達障害を含む、特別な支援を必要とするすべての子ども |
| 場 | 盲学校・聾学校・養護学校/特殊学級 | 特別支援学校に一本化/特別支援学級 |
| 考え方 | 障害の種類・程度に応じて、特別な場で教育する | 一人一人の教育的ニーズを把握し、適切な指導・必要な支援を行う |
| 通常の学級 | 対象外 | 通常の学級に在籍する子どもも対象。全校的な支援体制をつくる |
あわせて特別支援学校のセンター的機能(地域の幼稚園・小中学校等への助言・援助)と、特別支援教育コーディネーターの指名が制度化されました。出典は文部科学省「特別支援教育をめぐる制度改正」です。
引っかけポイント
「特殊教育から特別支援教育への転換」の年号は2つ出てきます。学校教育法等の改正は平成18年(2006年)、施行・本格実施が平成19年(2007年)4月。設問が「改正」を聞いているのか「実施」を聞いているのかで答えが変わります。迷ったら「2007年4月から特別支援教育がスタート」で押さえておけば、大半の選択肢は切れます。
法令上の位置づけ|学校教育法の3つの条文
| 条 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 第72条 | 特別支援学校の目的。幼稚園・小学校・中学校・高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授ける | 視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者、病弱者(身体虚弱者を含む)の5区分 |
| 第81条第1項 | 幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校において、教育上特別の支援を必要とする幼児児童生徒に対し、障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行う | 幼稚園を含む6校種(大学・高等専門学校・特別支援学校は対象外) |
| 第81条第2項 | 特別支援学級を置くことができる | 知的障害者/肢体不自由者/身体虚弱者/弱視者/難聴者/その他障害のある者で特別支援学級において教育を行うことが適当なもの |
引っかけポイント
特別支援学校の5区分と、特別支援学級の区分は違います。特別支援学校は「視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱(身体虚弱を含む)」。特別支援学級は「知的障害・肢体不自由・身体虚弱・弱視・難聴・その他」。学校では「視覚障害」「聴覚障害」、学級では「弱視」「難聴」と語が変わります。ここは条文の言葉そのままで問われます。
そして第81条第1項には幼稚園が含まれますが、第2項(特別支援学級)に幼稚園は含まれません。幼稚園に特別支援学級は置けない、ということです。
多様な学びの場と、通級による指導
中央教育審議会初等中等教育分科会の報告(平成24年7月23日)は、「多様な学びの場」として、通常の学級/通級による指導/特別支援学級/特別支援学校の4つを挙げています。
通級による指導(学校教育法施行規則第140条)の対象は、言語障害者、自閉症者、情緒障害者、弱視者、難聴者、学習障害者、注意欠陥多動性障害者、肢体不自由者・病弱者及び身体虚弱者です。知的障害者は通級による指導の対象に含まれていない点が、よく問われます。
りわさんメモ
(ここに、りわさん自身が受験したときの実感・失敗・工夫を1〜3文で書き足してください。例:この範囲は1回目に落とした。◯◯の順で覚え直したら本番で取れた。)
就学先の決定|2013年に仕組みが変わった
特別支援学校に就学する障害の程度は学校教育法施行令第22条の3に定められています。かつては、この基準に該当する子どもは原則として特別支援学校に就学することになっていました。
平成25年(2013年)の学校教育法施行令改正で、この原則が変わりました。
| 改正前 | 改正後(2013年〜) | |
|---|---|---|
| 原則 | 施行令第22条の3の基準に該当する者は原則として特別支援学校へ | 原則という考え方をとらない |
| 判断 | 認定就学者に該当する場合のみ小中学校へ(例外扱い) | 障害の状態、教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案し、市町村教育委員会が総合的に判断 |
| 保護者 | 意見聴取 | 保護者の意見については、可能な限りその意向を尊重しなければならない |
「就学基準に該当したら自動的に特別支援学校」ではない——これが改正の核心です。試験では「施行令第22条の3に該当する者は特別支援学校に就学しなければならない」といった、改正前の考え方をそのまま書いた選択肢が誤りとして出ます。
国際的な流れと国内法の年表
| 年 | できごと | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 1994年 | サラマンカ声明(特別なニーズ教育に関する世界会議/ユネスコとスペイン政府がスペイン・サラマンカで開催) | 正式には「特別なニーズ教育における原則、政策、実践に関するサラマンカ声明ならびに行動の枠組み」。インクルージョンの原則と「万人のための学校」 |
| 2004年 | 発達障害者支援法 成立(2005年4月施行) | 発達障害の定義と支援を法定化 |
| 2006年 | 学校教育法等の改正/国連総会で障害者権利条約を採択(12月) | 国内制度と国際条約が同じ年 |
| 2007年 | 特別支援教育が本格実施(4月)/日本が障害者権利条約に署名(9月28日) | 署名であって批准ではない |
| 2008年 | 障害者権利条約 発効(5月) | ― |
| 2011年 | 障害者基本法 改正 | 「社会的障壁」の定義、合理的配慮の考え方を導入 |
| 2012年 | 中教審初等中等教育分科会 報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」(7月23日) | 合理的配慮/基礎的環境整備/多様な学びの場の整理 |
| 2013年 | 障害者差別解消法 成立(6月)/学校教育法施行令 改正(就学先決定の仕組み) | ― |
| 2014年 | 日本が障害者権利条約を批准(1月20日に批准書寄託、2月19日に日本について効力発生) | 採択2006/署名2007/批准2014 |
| 2016年 | 障害者差別解消法 施行(4月1日) | 行政機関等は合理的配慮が義務、事業者は努力義務 |
| 2021年 | 障害者差別解消法 改正(令和3年法律第56号) | 事業者の合理的配慮を義務化 |
| 2024年 | 改正障害者差別解消法 施行(4月1日) | 事業者にも合理的配慮の提供が義務に |
出典は内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進」ほか。障害者権利条約は「採択2006/署名2007/批准2014」の3点セットで覚えてください。この3つを入れ替えるのが定番の引っかけです。
合理的配慮と基礎的環境整備
| 合理的配慮 | 基礎的環境整備 | |
|---|---|---|
| 誰が行うか | 学校の設置者及び学校 | 国(全国規模)・都道府県・市町村 |
| 対象 | 個別に必要とされるもの | 教育環境の整備全般 |
| 性格 | その子の状況に応じた必要かつ適当な変更・調整 | 合理的配慮の基礎となる環境整備 |
| 限界 | 設置者・学校に均衡を失した又は過度の負担を課さない | ― |
「均衡を失した又は過度の負担」という留保がついているのが合理的配慮の重要な特徴です。「どんな要望にも応えなければならない」という趣旨の選択肢は誤りになります。
障害者差別解消法における義務の整理も押さえてください。不当な差別的取扱いの禁止は、行政機関等も事業者も義務。合理的配慮の提供は、行政機関等は当初から義務、事業者は2024年4月1日から義務(それ以前は努力義務)。保育所や幼稚園も事業者に含まれるため、実務にも直結します。
個別の教育支援計画 と 個別の指導計画
これはほぼ確実にどこかで問われる区別です。名前が似ているだけで、目的も範囲もまったく違います。
| 個別の教育支援計画 | 個別の指導計画 | |
|---|---|---|
| 何のための計画か | 関係機関と連携した、生活全体の支援のための計画 | 学校(園)での指導のための計画 |
| 範囲 | 学校生活だけでなく、家庭生活・地域での生活も含む | 教育課程・指導内容・指導方法 |
| 時間軸 | 長期的(幼児期から学校卒業後までの一貫した支援) | 短期的(学期・年間などの単位できめ細かく) |
| 誰と作るか | 家庭、医療、保健、福祉、労働等の関係機関と連携して作成 | 教職員の共通理解のもとで作成 |
| キーワード | 連携/一貫/長期的な視点 | 指導目標/指導内容/配慮事項 |
ここが出る
区別の決め手は「支援」か「指導」か。
- 「教育支援計画」=関係機関と連携する、長期の生活全体の計画
- 「指導計画」=学校・園の中の、短期の指導の計画
「個別の教育支援計画は、学期ごとの指導内容を具体的に定めたものである」のような、2つを入れ替えた選択肢が定番です。
幼稚園教育要領・保育所保育指針・幼保連携型認定こども園教育・保育要領のいずれにも、障害のある子どもについて個別の教育支援計画・個別の指導計画(保育所保育指針では個別の指導計画)を作成し活用することに努める趣旨の記述があります。3法令の違いとあわせて確認してください。
よくある質問
特別支援教育はいつから始まりましたか?
平成18年(2006年)に学校教育法等が改正され、平成19年(2007年)4月から特別支援教育が本格的に実施されました。それまでの「特殊教育」が、発達障害を含む特別な支援を必要とするすべての子どもを対象とする「特別支援教育」に転換されました。設問で問われるのはたいてい「2007年」のほうです。
合理的配慮は、保育所や幼稚園にも義務がありますか?
あります。障害者差別解消法では、行政機関等には当初から合理的配慮の提供が義務づけられていました。事業者は努力義務でしたが、令和3年(2021年)の改正により令和6年(2024年)4月1日から義務化されました。私立の保育所・幼稚園も事業者に含まれます。ただし、実施に伴う負担が過重でない範囲という留保があります。
個別の教育支援計画と個別の指導計画は、どちらも保育所で作るのですか?
保育所保育指針では、障害のある子どもの保育について個別の指導計画を作成し、保育を展開することが求められています。加えて、家庭や医療・福祉などの関係機関と連携した支援のための計画(個別の支援計画)を活用することが解説で示されています。試験対策としては、まず「支援計画=関係機関と連携する長期の計画/指導計画=園内の短期の計画」という区別を確実にしてください。
