「4つのお題のうち、どれを選ぶのがいちばん楽か」。この問いは、令和6年までなら成立しました。いまは成立しません。令和8年の課題は3つで、どれを話すかは試験室に入ってから指定されます。選ぶ余地はなく、3本とも仕上げるのが前提です。
とはいえ、お題の難易度が同じわけではありません。難しい話ほど早く着手し、練習の回数を多く割り当てる。この配分を決めるために、お題を「構造」で見る目を持っておくと役に立ちます。ここでは物語の中身ではなく、台本を作る側から見た構造の観点だけで比較します。
引っかけポイント
公表されている条件にはこうあります。「1〜3の課題のうち、いずれかを試験室入室後に指定します。指定された課題以外を行った場合は、採点の対象外となります」。指定と違う話をした時点で、どれだけ上手でも点になりません。1話だけ完璧にする戦略は、いまは成立しません。
また課題の題名と本数は年度で変わります。令和6年までは4話から1話を選ぶ形式でした。受験する回の受験申請の手引きと実技試験概要で、必ず自分の目で確認してください。
令和8年の課題(公表されているもの)
| 課題 | 分類 |
|---|---|
| ももたろう | 日本の昔話 |
| おむすびころりん | 日本の昔話 |
| 3びきのこぶた | イギリスの昔話 |
出典は全国保育士養成協議会「令和8年【前期】実技試験概要」です。以下では、この3つを物語の内容ではなく、3分の台本にするときの作りやすさという一点で比較します。あらすじや本文の紹介はしません。物語の文章そのものには権利が及ぶ場合があり、また台本は自分の言葉で書くべきものだからです。
お題の難易度を測る4つのものさし
どの昔話が難しいかは、好き嫌いではなく次の4点で決まります。3分という枠に対して、どこに負荷がかかるかが変わるからです。
| ものさし | 見るところ | 多い/少ないとどうなるか |
|---|---|---|
| 登場人物の数 | 名前を呼ぶ必要がある人物・動物の数 | 多いほど紹介に時間を食い、声色の管理も難しくなる |
| 場面転換の数 | 場所や時間が変わる回数 | 多いほど「つなぎの一文」が必要になり、字数が増える |
| くり返し構造 | 同じ形の場面が続くか | あるほど3歳児に届きやすく、時間調整もしやすい |
| 元の話の長さ | 全体の出来事の量 | 長いほど大胆に削る判断が要る |
この4つのうち、くり返し構造だけはプラスに働きます。同じ形が続くと子どもは予測して待つようになり、こちらは間の長さで時間を動かせる。残り3つは基本的に負荷です。負荷が高いお題ほど、削る作業に時間がかかると考えてください。
3課題を構造で比べる
内容には踏み込まず、上の4つのものさしだけで並べます。実際に台本を書くときの負荷の見当をつけるための表です。
| 観点 | ももたろう | おむすびころりん | 3びきのこぶた |
|---|---|---|---|
| 登場人物の数 | 多い(主人公+育ての親+同行する動物3種+敵役) | 少ない(主人公+小動物。対になる人物を入れるかで変わる) | 中(主人公側3人+敵役1) |
| 場面転換 | 多い(家→出発→道中が複数→目的地→帰還) | 中(地上と地下の行き来。後半を入れると往復が増える) | 少なめ(家づくり→3軒を順にたどる) |
| くり返し構造 | あり(同行者が順に増える形) | あり(音と歌の反復が強い) | 非常に強い(3回の同型反復が話の骨格) |
| 元の話の長さ | 長い | 中(後半をどこまで入れるかで大きく変わる) | 中 |
| 3分に収める難度 | 高い。削る判断がいちばん多い | 中。どこで切るかの構成判断が要る | 低め。ただし会話が多く声色の管理が必要 |
| 主な負荷 | 情報の取捨選択 | 話の範囲を決めること | せりふの演じ分けと間 |
ここが出る
着手の順番は負荷の高いものからです。3分に収める難度が高い話を最後に回すと、時間が足りずに雑な台本のまま本番を迎えます。逆に、反復構造が強くて型に乗せやすい話は、後から作っても短時間で仕上がります。3課題のうち「いちばん長い話」から書き始めてください。
負荷の種類別に、対処を変える
登場人物が多い話の削り方
登場人物が多いお題でいちばん時間を食うのは、一人ひとりの紹介です。3分の枠では、名前を出すだけで数秒、性格を説明したらそれで10秒が消えます。次の順で削ります。
- 物語の結末に関わらない人物は、名前を出さない。「おじいさんとおばあさん」のように役割で呼ぶ
- 同じ役割の人物はまとめる。順に登場する同行者は、くり返しの形にして一気に処理する
- 紹介を行動に変える。「やさしい人でした」ではなく、やさしさが分かる行動を一文で
- 声色を割り当てるのは3人まで。それ以上は地の文で処理し、せりふにしない
削る基準の全体像は3分の台本の作り方の「残す・削る」表を参照してください。
会話が多い話の作り方
反復と掛け合いが骨格になっているお題は、構成では楽ですが、演じ分けの負荷が上がります。同じ形のやり取りが何度も出るので、毎回同じ調子でやると単調になり、毎回違う調子にすると形が崩れる。折り合いのつけ方は決まっています。
- せりふの言い回しは固定し、声の高さ・速さ・音量だけを1回ごとに1段変える
- 1回目は普通、2回目はやや強く、3回目はいちばんゆっくり大きく。段階を数字で決めておく
- せりふの前に必ず一拍置く。間が「別の人が話す」という合図になる
- 体の向きをわずかに変えて、話し手が入れ替わったことを見た目でも示す
声色と間の具体的な作り方は表情・身振り・目線の作り方にまとめました。
3本を同時に仕上げる手順
3本を別々に作ると3倍の労力がかかります。共通の型を1つ作り、中身を差し替える方式にしてください。導入と結びの言い回しは、3課題でまったく同じにしてしまってかまいません。
| 週 | やること | 到達点 |
|---|---|---|
| 1週目 | 負荷のいちばん高い課題で台本を1本完成させる | 型が決まる |
| 2週目 | 同じ型で残り2本を書く。導入と結びは使い回す | 3本の骨組みがそろう |
| 3週目 | 3本それぞれをストップウォッチで2分45〜55秒に合わせる | 時間が安定する |
| 4週目 | 表情・身振り・目線を3本に乗せる。動画で確認 | 表現が乗る |
| 5週目 | くじで1本引いて即通す練習。1日1〜2本 | 当日指定に耐える |
| 直前 | 3本を1日1回ずつ。喉を使いすぎない | 本番の状態を作る |
5週目の「くじで引く」練習が要です。家では3本とも話せるのに、当日その場で指定されると頭が切り替わらない、というのがこの形式の落とし穴です。紙に3つ書いて折り、引いた瞬間から30秒以内に話し始める。この負荷を10回かければ、当日の切り替えは怖くなくなります。
苦手な1本ができてしまったら
どうしても1本だけ仕上がらないときの考え方です。捨てるという選択はありません。指定されたら採点対象外になるからです。優先すべきは完成度より最後まで話し切れることです。
| 状態 | やること |
|---|---|
| 時間が全然合わない | 内容を減らして600字台まで削り、まず3分に入れる |
| 途中で詰まる | くり返し部分のせりふだけ完全に固定し、そこを支柱にする |
| せりふが混ざる | 3本の導入と結びを同じ文にして、混ざる余地を減らす |
| 身振りが思い出せない | その1本だけ身振りを3か所に絞る |
りわさんメモ
(ここに、りわさんが3課題をどう回したかを1〜3文で。例:いちばん長い話から作ったら残り2本が早かった、くじ引き練習で切り替えの遅さに気づいた、など。)
よくある質問
お題は本当に自分で選べないのですか?
令和8年の実技試験概要では、3つの課題のうちいずれかを試験室入室後に指定すると明記されています。指定された課題以外を行うと採点の対象外です。令和6年までは事前公表の中から選ぶ形式だったので、古い解説記事と食い違います。必ず受験する回の公表内容で確認してください。
3課題のうち、どれがいちばん有利ですか?
選べないので有利不利は関係ありません。ただ準備の負荷には差があります。登場人物が多く場面転換の多い話は削る作業が重く、反復構造が強い話は型に乗せやすい。負荷の高い話から着手して、練習回数を多めに配分してください。
3本すべて同じ導入と結びにしてもいいですか?
問題ありません。評価されるのは指定された話を3歳児に向けて3分で語れるかどうかで、導入の独自性ではありません。むしろ入り口と出口を固定しておくと、当日どれを指定されても同じリズムで話し出せるので、緊張への備えとしても有効です。
