ヴォイニッチ手稿とは?製本の順番違い説を図解、年代と解読説の今【年表ツール付き】

ヴォイニッチ手稿とは?製本の順番違い説を図解、年代と解読説の今【年表ツール付き】 社会・ニュース
2026年10月17日時点の情報です

「世界でいちばん謎めいた本」と呼ばれるヴォイニッチ手稿が、また話題になっています。きっかけは、ページがもともとの順番どおりに製本されていなかった可能性を示した研究で、10月に入って日本のメディアでも相次いで紹介されました。

この記事では、ヴォイニッチ手稿とは何か、いつ作られたのか、新しい研究で何がわかったのかを図解で整理します。年を入れると、その時代に手稿がどうなっていたかがわかる年表ツール付きです。

3行でわかる要点
  • ヴォイニッチ手稿は、誰にも読めない文字と植物・天体・人物の絵で埋め尽くされた約240ページの写本。米イェール大学の図書館が所蔵
  • 羊皮紙は放射性炭素年代測定で1404〜1438年ごろのものとされ、ロジャー・ベーコン作などの説は否定された
  • 2026年7月公開の研究は、本来は独立していた紙が入れ子状にとじられ、順番が崩れた可能性を指摘。ただし文字の解読には至っていない

ヴォイニッチ手稿とは

ヴォイニッチ手稿は、15世紀ごろに作られたとみられる手書きの本です。名前は、1912年にこの写本を購入した古書商ウィルフリッド・ヴォイニッチに由来します。現在は米イェール大学のバイネッケ稀覯本・手稿図書館が「MS 408」として所蔵しており、1969年に古書商ハンス・P・クラウスが寄贈しました。

項目内容
所蔵イェール大学 バイネッケ稀覯本・手稿図書館(MS 408)
素材羊皮紙(ベラム)
ページ数現存は約240ページ(欠けているページもある)
大きさ約23.5cm×16.2cm
羊皮紙の年代1404〜1438年ごろ(アリゾナ大学の放射性炭素年代測定)
文字ほかに例のない独自の文字。言語も内容も未解明
名前の由来1912年に購入したウィルフリッド・ヴォイニッチ

年代測定でわかるのは羊皮紙が作られた時期で、文字が書かれた時期はそれより後の可能性もあります。それでも、13世紀のロジャー・ベーコンや、15世紀後半生まれのレオナルド・ダ・ヴィンチの作とする説は成り立ちにくくなりました。

何が描かれている? 6つのセクション

文字は読めませんが、絵の内容からおおまかに次のようなまとまりに分けられています(呼び名は研究者が便宜的につけたものです)。

セクションおもな絵位置の目安
植物実在が確認できない植物を1ページに1種類ずつ前半の約半分
天文・占星術円形の図、黄道十二星座のような図中ほど
生物(浴槽)浴槽につかる女性たち、管でつながった水路のような絵中ほど
宇宙論折り込みページに円形の図が連なる中ほど
薬草草の全体や葉・根を並べた図、壺のような容器後半
文章(レシピ)絵がなく、短い段落の左に星や花のような印最後

新しい研究:ページの順番が違っていた?

ARTnews JAPANなどによると、研究者のコリン・レイフィールド氏とリサ・ファギン・デイヴィス氏が、学術メディア「Digital Medievalist」で2026年7月に研究を公開しました。注目されたのは次の2点です。

  • 文章どうしの似かたを数値化して分析すると、いまのページの並びと内容のまとまりが合わない部分がある
  • 絵のつながりが切れている:川や管を描いた図が、とじ目の近くで途切れ、向かいのページの絵につながっていない

ここから、二つ折りの羊皮紙はもともと独立して重ねられていたのに、15世紀によく使われた方法で入れ子状にとじられたため、本来のページ順が崩れたのではないか、と考えられています。手稿が複数の小冊子をもとに組み立てられた可能性も示されました。

二つ折りの紙を「並べる」か「入れ子にする」か 本来(独立した二つ折り) 紙A 1・2・3・4 紙B 5・6・7・8 読む順:1→2→3→4→5→6→7→8 紙Aの絵は紙Aの中でつながる 入れ子状にとじると 外側=紙A 内側=紙B 5・6・7・8 1・2 3・4 読む順:1→2→5→6→7→8→3→4 紙Aの2と3が離れ、絵や文章が途切れる 新研究は、こうした「とじ方の違い」でページ順が崩れた可能性を指摘
製本の仕組みを単純化した模式図(実際の手稿の構成とは異なります)。研究内容はARTnews JAPANの報道をもとに作成。
ページの順番がわかっても、それだけで文字が読めるようになるわけではありません。記事でも「文字の解読にはまだ至っていない」とされています。ただ、本来のまとまりがわかれば、どの文章とどの絵が対応するのかを考える手がかりになります。

手稿がたどった600年の流れ

年できごと
1404〜1438年ごろ羊皮紙が作られる(年代測定による)
1599年神聖ローマ皇帝ルドルフ2世が写本を購入した記録があり、この手稿のことではないかという説がある
1639年プラハの錬金術師ゲオルク・バレシュが学者キルヒャーに送った手紙。手稿に触れた最古の資料とされる
1665年または1666年ヤン・マレク・マルチがキルヒャーに手稿を送る。添えた手紙に「600ドゥカートで購入された」という話が書かれている
1912年ウィルフリッド・ヴォイニッチがイタリアで購入
1969年ハンス・P・クラウスがイェール大学に寄贈
2026年7月製本の順番に関する研究が公開される
その年、手稿はどうしていた? 年表ツール

これまでの主な説と、いまの見方

説中身いまの見方
ロジャー・ベーコン作13世紀の学者が知識を暗号で書いた羊皮紙の年代と合わず、成り立ちにくい
偽書説16世紀に皇帝から金をだまし取るために作られた羊皮紙は15世紀前半のもの。ただし古い紙に後から書いた可能性を完全には否定できない
暗号説実在の言語を暗号化した第二次世界大戦の暗号解読者フリードマンらも解けず、未確定
人工言語説暗号ではなく、作られた言語で書かれているフリードマンが示唆。未確定
医学書(女性の健康)説浴槽の絵などから、女性の体や出産に関する内容とみる複数の研究者が提案しているが、決定的な証拠はない
「解読した」という発表トルコ語、ラテン語の一種、AIによる解析など何度も発表されてきたが、広く認められたものはない

ネット上では「AIで解読された」「完全に読めた」という話も出回りますが、専門家の間で認められた解読はありません。ニュースを見るときは、誰が・どこで発表し、ほかの研究者がどう評価しているかを確かめるのがおすすめです。

実物は見られる?

手稿そのものは図書館で厳重に保管されていますが、イェール大学の図書館はデジタル画像をインターネットで公開しています。全ページを自宅で見られるので、植物や浴槽の絵を実際に見てみると、なぜ「謎の本」と言われるのかがよくわかります。

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よくある質問

ヴォイニッチ手稿は解読された?

2026年10月時点で、広く認められた解読はありません。2026年7月の研究もページの順番に関するもので、文字の解読には至っていないとされています。

いつ、誰が書いたの?

羊皮紙は1404〜1438年ごろのものとされていますが、書いた人はわかっていません。文字が書かれた時期が羊皮紙より後の可能性もあります。

どこにある?

米イェール大学のバイネッケ稀覯本・手稿図書館が所蔵しています(MS 408)。デジタル画像が公開されています。

なぜ「ヴォイニッチ」という名前?

1912年にこの写本を購入した古書商ウィルフリッド・ヴォイニッチにちなんでいます。

新しい研究では何がわかった?

文章の似かたの分析や絵のつながりから、もともと独立していた二つ折りの紙が入れ子状にとじられ、本来のページ順が崩れた可能性が示されました。

何ページある?

現存するのは約240ページで、欠けているページもあると考えられています。

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