実技試験の造形に関する技術は、筆記9科目を突破した人だけが受ける最後の関門です。音楽・造形・言語の3分野から2分野を選び、それぞれ50点満点で30点以上を取れば合格。造形は「絵が上手い人が受かる試験」だと思われがちですが、実際に点を分けているのは画力よりも当日示された条件をどれだけ正確に絵に落とし込めたかです。この記事では、造形試験の全体像と、採点がどこを見ているのかという考え方を整理します。
なお、試験時間・用具・解答用紙のサイズといった条件は年度で見直される可能性があります。以下は全国保育士養成協議会が公表している令和8年の実技試験概要に基づく内容ですが、受験する回の「受験申請の手引き」と実技試験概要を必ず自分の目で確認してください。
造形に関する技術の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験の内容 | 保育の一場面を絵画で表現する |
| 求められる力 | 保育の状況をイメージした造形表現(情景・人物の描写や色使いなど)ができること |
| 試験時間 | 45分 |
| 解答用紙 | A4判。描画枠は縦横19cm |
| お題の公表 | 事前公表なし。当日、問題文と条件が示される |
| 配点 | 50点満点。30点以上で合格(2分野とも30点以上が必要) |
| 使える筆記具 | 鉛筆またはシャープペンシル(HB〜2B)、色鉛筆(12〜24色程度)、消しゴム |
| 使えない用具 | クレヨン、パス、マーカーペン、摩擦熱で消える色鉛筆 など |
腕時計は持ち込めますが、アラーム音が鳴るものや通信機能のあるものは不可とされています。また、人物イラストが入った文房具は机上に置けません。色鉛筆のケースにキャラクターが印刷されている、という理由で当日あわてる人がいるので、練習の段階から本番と同じ用具でそろえておくのが安全です。
ここが出る
造形は「45分・19cm四方・色鉛筆」の3つが動かない枠組みです。この3つから逆算すると、練習でやるべきことは自動的に決まります。すなわち、45分で塗り終わる手数に絵を単純化すること、19cmという小さい枠に人物を大きく収める構図を持つこと、色鉛筆で広い面を早く均一に塗る手を作ることの3点です。
当日の問題文は「事例」と「条件」でできている
造形の問題用紙には、まず保育の一場面を説明する短い事例文が置かれ、その下に箇条書きの条件が並びます。条件の中身は回によって違いますが、例年おおむね次の4種類の情報が指定されます。
| 指定される要素 | 条件文の例(形式のイメージ) | 絵で満たす方法 |
|---|---|---|
| 活動 | 〜している様子を描くこと | 手に持っている物・体の向き・動作で示す |
| 場所 | 〜の様子がわかるように描くこと | 背景の要素(床・壁・遊具・空など)で示す |
| 人数 | 子ども◯名以上、保育士◯名以上を描くこと | 指定より1名多く描いて数え間違いを防ぐ |
| 着彩 | 枠内全体を色鉛筆で着色すること | 白い部分を残さない |
造形の過去問題は、筆記試験のように協議会のサイトで問題文が公開されているわけではありません。公開されているのは「実技試験概要」までです。そのため、上の表はあくまで受験者の報告や対策教材が共通して伝えている出題形式のイメージであり、当日の条件文がこの形とは限りません。本番では問題文をそのまま読み、書かれている条件だけを満たしにいってください。
採点の考え方は3つの層で理解する
採点基準そのものは公表されていません。したがって「◯点減点」といった話はすべて推測です。ただし、公式が示している「求められる力」の文言から、見られている観点は読み取れます。「保育の状況をイメージした造形表現(情景・人物の描写や色使いなど)ができること」。ここには情景・人物・色使いの3語が入っています。つまり、絵として上手いかではなく、保育の場面が伝わるかが軸だということです。
| 層 | 問われていること | ここを落とすと |
|---|---|---|
| 第1層:条件 | 指定された人数・場所・活動が絵に入っているか | 画力に関係なく評価が伸びない |
| 第2層:伝達 | 絵を見た人に「保育のどんな場面か」が伝わるか | 条件は満たしていても情景として弱い |
| 第3層:完成度 | 枠内が塗り終わり、人物の描写や色使いが整っているか | 未完成・白残りとして見える |
練習で伸ばしやすいのは第1層と第3層です。第1層は読解と確認の習慣、第3層は手数と時間配分の問題で、どちらも画力とはほとんど関係ありません。逆に第2層は絵の力が出るところですが、これも構図の型を持っておけばかなり底上げできます。
引っかけポイント
「上手に描こう」と思った瞬間に条件チェックが後回しになります。造形で最も痛いのは、45分かけて丁寧に描いた絵が条件を1つ落としているケースです。デッサンの狂いは部分的な話ですが、条件落ちは絵全体の評価にかかわります。読解3分を惜しまないでください。
造形を選ぶ人・選ばないほうがいい人
実技は3分野から2分野を選びます。造形の一番の特徴は、本番で人前に出なくていいことと、お題が事前にわからないことの2点です。この2点をどう評価するかで向き不向きが決まります。
| 造形が向きやすい人 | 慎重に考えたい人 |
|---|---|
| 人前での実演に強い緊張がある | 時間内に手を動かし切るのが苦手 |
| ピアノを弾く環境や練習時間がない | 初見の課題に対応するのが苦手 |
| 自宅で1人で練習を積み上げられる | 絵を描くこと自体に強い抵抗がある |
| 手順を決めて反復するのが得意 | 本番までの練習回数を確保できない |
「絵が下手だから造形はやめる」という判断は、少し早いかもしれません。造形で求められているのは似顔絵の精度ではなく、決まった型で保育の場面を組み立てる作業です。逆に、時間内に作業を終える見通しが立たない人にとっては、45分の締め切りがそのままリスクになります。実技試験ハブで3分野を並べて比べたうえで決めてください。
造形対策の進め方(このページから読む順番)
造形の練習は、いきなり過去のお題を45分で描いても伸びません。分解して1つずつ手に入れていくほうが早いです。次の順番をおすすめします。
| 順番 | やること | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 1 | 試験の条件と採点の考え方を把握する | このページ |
| 2 | 人物を1人、手順どおりに描けるようにする | 子どもと保育士の描き分け |
| 3 | 色鉛筆で速く均一に塗る手を作る | 色鉛筆の選び方と塗りのコツ |
| 4 | どんなお題でも使える構図の型を3つ持つ | 構図パターン集 |
| 5 | 45分の時間配分を体に入れる | 45分の時間配分 |
| 6 | 提出前チェックで失点要因をつぶす | 落ちる絵の共通点8つ |
2から4までは、それぞれ短時間の反復で構いません。人物なら1体5分、着彩なら手のひらサイズの面を1分、という単位で回数を稼ぎます。通し練習(45分で1枚)は、2〜4がある程度できるようになってから週1〜2回のペースで入れれば十分です。
りわさんメモ
(ここに、りわさん自身が造形を選んだ理由と、最初の1枚を描いたときの実感を1〜3文で書き足してください。例:45分で塗り終わらず白いまま出した回がある。人物を先に塗る順番に変えてから間に合うようになった。)
よくある質問
絵が苦手でも造形を選んで大丈夫ですか。
公式が求めているのは「保育の状況をイメージした造形表現」で、写実的な巧さではありません。人物の描き方と構図の型を決めて反復すれば、絵の経験がなくても形にはなります。ただし45分という締め切りは全員に等しくかかるので、時間内に塗り終える練習だけは省略できません。
お題は事前に発表されますか。
されません。造形は当日に問題文と条件が示される形式です。事前に課題が公表される言語や音楽とはここが決定的に違うので、対策は「特定のお題を仕上げる」ではなく「どのお題でも使える型を持つ」方向になります。
色鉛筆は何色そろえればいいですか。
令和8年の実技試験概要では12〜24色程度と案内されています。色数が多いほど有利というものではなく、探す時間が増えるぶん不利になることもあります。用具の条件は年度で見直される可能性があるため、受験する回の受験申請の手引きで必ず確認してください。
